変性性脊髄症(DM)という疾患をご存じでしょうか。
詳しい発病メカニズムはわかっていませんが人のALSと同じようにSOD1という遺伝子の変異で起こる事がわかっています。
10歳過ぎから発症する遺伝性疾患ですが他の脊椎の異常(ヘルニアなど)と区別しにくいところもあります。
コーギーに良くみられる疾患ですが大型犬にも発症しています。
今回紹介するのは 変性性脊髄症(DM)といわれる遺伝性疾患です。
犬の遺伝性疾患 変性性脊髄症(DM)ってどんな病気?
10歳ころから症状がでてきて徐々に進行していく疾患です。
足を引きずるような感じがする、といった軽い症状から最終的には寝たきりになり呼吸も出来なくなってしまいます。
変性性脊髄症の原因
原因となる遺伝子の変異が見つかっています。
変異があるのはスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)というタンパク質をコードする遺伝子。
変性性脊髄症の症状
進行性の疾患です。
10歳ころに発症しますが、進行の速さには個体差があり3年から4年かかります。
最初の症状は
- 後ろ足を擦る(歩いている時に音がする、爪の上部分がすれている)
- ナックリングがある(立っている時に足先が裏返っている、足先を裏返してももとに戻さない)
- 足がもつれる、ふらつく、まっすぐ歩けない
- 後ろ足を揃えて歩く(うさぎみたいにぴょこんと)
進行してくると以下の症状が出ることがあります。
- 立てなくなる(筋肉量が減少するので立位を維持できない)
- 痛みが無いので座ったままでも前にすすもうとする。
さらに進行すると症状がひろがります。
- 前足にも症状があらわれて立ち上がらなくなる(フセのまま動かない)
- 声がかすれることがある。
症状が進行するとさらに深刻化します。
- フセが維持できなくなり横になる。
- 尿意、便意が無くなり失禁する。
- 呼吸が出来なくなってくる(途切れる、荒くなるなど)
最終的には呼吸不全で亡くなります。
変性性脊髄症の治療
治療法はありません。
症状が段階に合わせて変化するので症状にあわせたケアが必要になります。
- 初期には動けるので足先や擦れる部分の保護。
- 車いすの利用(残存能力で自力歩行できるようにする、初期には後肢のアシスト、進行すれば四肢のアシストが必要)
- 筋肉量が低下して運動量が低下するので体重管理が必要
- 自力排泄が出来なくなれば排泄の管理が必要になってきます。
- 寝たきりになれば呼吸を助ける姿勢を維持して床ずれを予防するため体位変換が必要になります。
状態に合わせた投薬が行われることもあります。
犬の遺伝性疾患 変性性脊髄症の検査や予防
この疾患には有効な予防法はありません。
検査は似たような症状の疾患との区別をつけるためにも行われます。(CTやMRIなど)
遺伝子検査って?
変性性脊髄症の遺伝子を血液検査で調べる事が出来ます。
繁殖前に組み合わせを考えれば発症を防ぐ事ができるので是非実施していただきたい検査です。
クリア (発症無し・健全)☆☆
キャリア (発症の危険性は無いが因子を持っている)☆★
アフェクテッド (発症します)★★
繁殖時の注意事項
上記の結果を踏まえて交配計画を立てるようにしましょう。
組み合わせによる子犬の発症の確率 クリア(☆☆)キャリア(☆★)アフェクテッド(★★)
組み合わせ | 父犬☆☆ | 父犬☆★ | 父犬★★ |
母犬☆☆ | 100% ☆☆ | 50%☆☆ 50%☆★ | 100%☆★ |
母犬☆★ | 50%☆☆ 50%☆★ | 25%☆☆50%☆★25%★★ | 50%☆★50%★★ |
母犬★★ | 100%☆★ | 50%☆★50%★★ | 100%★★ |
アフェクテッドが出る組み合わせをさける事で回避することが出来ます。
変性性脊髄症のみられる犬種
犬の遺伝性疾患 変性性脊髄症 まとめ
多くの犬種で見られる変性性脊髄症ですがコーギーでの発症が特に多いようです。
初期の症状は椎間板ヘルニアによく似ているのでしっかりと診断してもらうことが必要ですね。
進行性の疾患なので症状にあわせたケアが必要。
痛みが無いので本人はとても元気なまま病気が進行してしまいます。
獣医師と相談しながらケアしてあげましょう。
今回紹介したのは 変性性脊髄症(DM)でした。